日本の多様性が増す中、LGBTQ+コミュニティの声が高まってきています。特に住まい探しにおける課題や支援が焦点となっています。

この記事では、LGBTQ+の住まい探しの現状、遭遇するハードル、そして前向きな取り組みや今後の展望について詳しく探ることで、より理解深い社会を目指していけたらと思います。

初めに
IRISでは、あらゆるマイノリティが暮らしやすくなることを目指すという意味から「LGBTs」と表記していますが、今回は一般的な「LGBT」「LGBTQ」「LGBTQ+」について解説するため、表記が混在しております。

LGBTお部屋探し

LGBTQ+とは何か?

「LGBTQ+」は、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)、クィア/クエスチョニング(Queer/Questioning)を表す頭文字を取った総称です。最近では、これらのカテゴリーに含まれない性的指向や性自認を持つ人々を表す「+」が追加されています。

LGBT総合研究所の「LGBT意識行動調査2019」によれば、日本の20代から60代の10.0%がセクシャルマイノリティであると報告されています。しかし、このセクシャルマイノリティの78.8%は、自分が当事者であることを公にしていないと回答しています。これは、LGBTQ+の人々がまだ社会的な偏見や差別に直面していることを示しています。

住まい探しの高いハードル

渋谷区のパートナーシップ証明書

2015年4月1日に、渋谷区で「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」が施行されました。この条例により、パートナーシップ証明書が発行されるようになり、これが大きな話題となりました。この頃から、特に同性カップルが賃貸住宅を借りることが社会的な問題として認識されるようになりました。

賃貸住宅の契約問題

賃貸住宅を借りる際、一般的な賃貸借契約では、貸主の許可を得ずに又貸しや同居をすることが禁止されています。同居人がいる場合、その人の名前は契約書に記載されることが一般的です。結婚や婚約している異性の場合は認められることが多いですが、同性のパートナーを契約に含めることはまだ一般的ではありません。

このため、同性カップルはルームシェアを選択するか、無断でパートナーと同居することを選ぶことが多いです。しかし、無断での同居は契約違反となり退去を求められるリスクがあります。

ペアローンと収入合算の詳細

「ペアローン」とは

ペアローンは、2人がそれぞれに住宅ローンを借りる際の制度で、互いに連帯保証人となるものです。これにより、一方が返済できなくなった場合、もう一方が返済の義務を負います。

「収入合算」とは

収入合算は、2人の収入を合算した額を収入として認め、その収入に基づいて借入額の上限を審査する制度です。これにより、単独での借入よりも大きな金額を借りることが可能になります。

収入合算には主に2つのタイプが存在します。

1.連帯保証型

このタイプでは、収入を合算する人が住宅ローンを借りる人の連帯保証人となります。これにより、借りた人が返済できない場合、保証人に返済が請求されます。この場合、住宅の名義や住宅ローン控除の対象は、借りた人だけとなります。

2.連帯債務型

このタイプでは、収入を合算する人も住宅ローンの返済義務を共有します。これにより、共有名義での住宅購入や住宅ローン控除の利用が可能になります。

LGBTカップルの住宅ローンの課題

LGBTのカップルの場合、ペアローンや収入合算の制度を利用することは難しい場合があります。そのため、一方が単独で住宅ローンを借りて購入し、実際には2人で返済を進めることが一般的です。

しかし、この方法には問題があり、住宅ローンを借りていない方の返済額が「不動産所得」として、または「贈与」として課税対象となる可能性があります。LGBTお部屋探し

LGBTの住まい探しを支援する不動産会社

三好不動産の取り組み

三好不動産は、LGBTのカップルを対象とした住宅ローンのセミナーを開催しています。このセミナーでは、LGBTのカップルが住宅ローンを取得する際の注意点や、住宅購入の際のリスクなどについて詳しく説明されています。また、三好不動産は楽天銀行と提携し、LGBT向けの住宅ローンを提供しています。

LGBTライフプランセミナーの内容

このセミナーでは、LGBTのカップルが住宅を購入する際のリスクや、住宅ローンを取得する際の注意点などについて詳しく説明されています。また、生命保険や公正証書についても詳しく説明されており、同性カップルが法的な婚姻関係を結べないための対応策についても紹介されています。

裾野が広がる、LGBT住宅ローン

三好不動産は、2021年4月に楽天銀行とLGBT向けの住宅ローンで提携しました。この提携により、同性カップルが住宅ローンを取得する際のサポートが強化されました。また、この提携により、男性同士のカップルや女性同士のカップルが住宅ローンを取得する際のハードルが低くなることが期待されています。

LGBTの住まい探しの現状と今後の展望

現状の制度や商品の活用

現在、多くのLGBTカップルは、現行の制度や商品を活用して、住宅を購入したり、賃貸住宅を借りたりしています。しかし、これらの制度や商品は、LGBTカップルのニーズを十分に満たしているわけではありません。

支援策の不十分さ

LGBTカップルが住宅を購入する際の支援策は、まだ不十分であると言われています。特に、住宅ローンの取得や賃貸住宅の契約に関する問題が指摘されています。

不動産会社の取り組み

2021年4月に、LIFULL HOME'Sを運営するLIFULLが、不動産会社向けに「LGBTQ接客チェックリスト」を提供することを公表しました。

このチェックリストは、不動産会社のスタッフがLGBTカップルのニーズを理解し、偏見のない接客をするためのものです。

今後の展望

住まい探しのプロである不動産会社が、LGBTカップルのニーズを理解し、適切なサポートを提供することで、不動産オーナーや賃貸住宅の管理会社の意識が変わることが期待されています。

また、LGBTカップルがスムーズに住まい探しを進めることができるようになることも期待されています。

まとめ

LGBTQ+は、住まい探しにおいて独自の課題を抱えています。特に、賃貸住宅の契約時にパートナーシップを明示することの難しさや、同性カップルにおける住宅ローンの取得障壁は、多くのカップルが直面する問題となっています。渋谷区のパートナーシップ証明書のような制度は一歩前進となったものの、まだまだ解決すべき課題は多いのが現状です。

一方で、三好不動産のような先進的な不動産会社がLGBTQ+の住まい探しをサポートする取り組みを始めており、このような動きは非常に心強いです。今後の住宅市場におけるLGBTQ+コミュニティの地位向上の兆しと言えるでしょう。