初めに
IRISでは、あらゆるマイノリティが暮らしやすくなることを目指すという意味から「LGBTs」と表記していますが、今回は一般的な「LGBT」について解説するため、表記が混在しております。

LGBTの人は、自らのセクシュアリティやジェンダー・アイデンティティ、社会との関わり方など様々なことで不安や悩みを抱えて生きている人が多くいます。

LGBT当事者が1人暮らしをする際に感じる不安と、解決するための相談窓口やコミュニティを解説します。1人だけで悩んでしまうと泥沼にはまってしまい、ますます悪い方向に向かってしまいかねません。

現在では、LGBT当事者や関係者に向けて様々な相談窓口があります。1人で不安や悩み、問題を抱え込まずに、相談に乗ってもらうようにしましょう。

LGBTお部屋探し

LGBTの1人暮らしで感じる不安の種類

LGBTの1人暮らしで感じる不安の種類を5個解説します。

社会的な差別や偏見に対する不安

LGBTに対する差別や偏見は、残念ながら簡単にはなくなりません。「(LGBTが)隣に住んでいたら嫌だ」「(同性婚を)導入したら国を捨てる人もいると思う」本当に辛い発言ですが、前首相秘書官がこうした発言をして更迭となったことは記憶に新しいと思います。この発言はオフレコを前提にしていたようですが、裏を返せばこうしたLGBTに対する差別的な考え、偏見をもっている人がまだまだ日本社会に居ることの現れだと思います。LGBT当事者が1人暮らしをする際に、偏見や差別をされてしまわないかと不安になってしまうのは仕方のないことかと思います。

住居探しの際に差別的な態度を受ける可能性に対する不安

LGBTの人は、外見上の性別と戸籍上の性別が一致しない、もしくはしにくい場合があります。入居申し込みの手続きや書類、身分証などで性別を確認されてしまうと、LGBT当事者であることを担当者にカミングアウトする必要がでてきます。不動産会社の担当者がLGBTに関する知識を持ち合わせていなかった場合、差別的な発言をされてしまったり、逆に腫れ物に触るように不自然な対応をされてしまわないかと不安になってしまいます。最悪の場合、お部屋探し自体を断られることになってしまわないかという不安を抱えてしまいかねません。実際、スーモのデータによるとトランスジェンダーで書類上の性別と外見のギャップにより入居を断られたという人が15%も居ることがわかっています。

 

参考:SUUMO for LGBT

セクシュアリティやジェンダー・アイデンティティに関する問題が起きた場合に対する不安

セクシュアリティやジェンダー・アイデンティティに関して何か問題が起きてしまったらどうしようと不安になっているLGBT当事者もいます。筆者もその1人でした。自分はずっとレズビアンだと思っていた、ゲイだと思っていた、トランスジェンダーだと思っていた、しかしそうだと断言できるのか自信が持てなくなってくる場合があります。もしくは内面的には男寄りだと思っていた、女寄りだと思っていた、もしくは男女どちらでもないと思っていたがよく分からなくなってしまうといったようにジェンダー・アイデンティティが揺らいでしまうような問題が起きてしまうことがあります。1人暮らしでは頼れる人がいないため、こうした自己像に関する悩みを抱えてしまうと一気にどん底まで落ちてしまう恐れがあります。

 

パートナーがきたときに周りの目が気になる

パートナーを自宅に招いた際に、「近所の人からどういう目でみられるのだろう?」と不安になるLGBT当事者は多いと思います。世帯数が少ない小規模なアパートでは、こうした不安が顕著になります。著者も賃貸のアパートに同性パートナーを招いていたのですが、近所の人や職場の人に見られないかと常にビクビクしていて、全くリラックスできませんでした。

 

環境変化による人間関係の変化

LGBTが人間関係から受けるストレスは、異性愛者(ストレート)の人よりも繊細になりがちです。LGBTを隠している人の場合、恋愛に関する話をしたくない人もいます。入学・就職・転職などによって新しい環境に入っていくと、必ず新しい人間関係と向き合う必要がでてきますが、プライベートなことは極力聞かれたくないという人もいます。新しい人間関係の中に、「他人のプライベートをやたらと根掘り葉掘り聞きたがる人がいたらどうしよう」「結婚していないことを問い詰められたらどうしよう」「恋人について聞かれたらどうしよう」と不安になってしまうことも多くあります。筆者もそういったストレスから退職・転職を繰り返してしまった経験があります。

 

安心できる環境を作るために

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1人だけでさまざまな不安を解決しようとするのは難しいですし、精神的にも辛くなってしまいます。そこで、3つの解決方法を提示させていただきます。

サポートがある場所を探す

現在では、LGBT当事者向けにさまざまなサポート施設・団体がありますのでいくつかご紹介させていただきます。困っている人、「死にたいほどつらい」「不安で仕方ない」「生きづらい」と思い悩んでしまっている方は、ぜひともこうしたサポートを受けていただきたいです。対面、電話、LINE、メール、WEBなどさまざまな相談方法がありますのでご自分にあった方法で相談することができます。



LGBTQ+いのちの相談窓口

新宿1丁目にある「プライドハウス東京レガシー」が行っている相談窓口で、対面とオンラインが選択できます。LGBTQ+当事者、そうかもしれない人の困りごとや悩みを聞いてもらえます。LGBTフレンドリーな弁護士による法律相談も行っています。

 

よりそいホットライン

一般社団法人社会的包括サポートセンターの相談窓口です。どなたでも利用できます。性別違和、同性愛などについて相談できる「セクシュアルマイノリティ専用ライン」という相談窓口が用意されています。フリーダイヤルで電話できます。

チャットやメールで相談したい方は、こちらをご参照ください。

 

生きづらびっと

NPO法人自殺対策支援センターライフリンクが運営しています。LINE、WEBでのチャットの2種類の相談方法が用意されています。



地域別にある相談先

全国各地に相談できる施設はあります。全てを紹介しきれないため一部ではありますが、ご紹介します。

一般社団法人にじーず(北海道)

みやぎ男女共同参画相談室(宮城県)

とちぎにじいろダイヤ(栃木県)

Tokyo LGBT相談専門電話相談(東京都)

かながわSOGI派遣相談(神奈川県)

LGBTQ+電話相談(新潟県)

ふじのくにLGBT電話相談(静岡県)

特定非営利活動法人PROUD LIFE(愛知県)

プライドセンター大阪(大阪府)

エソール広島LGBT電話相談(広島県)

LGBT電話相談(香川県)

LGBT電話相談(福岡県)

LGBT相談所(沖縄県)

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友人・パートナーとの交流を保つための方法

SNSを使う

Instagramやtwitterでは本名が不要なため、LGBT当事者の人同士の交流がしやすくなっています。同じ趣味をもっている人、近い地域に住んでいる人など共通点をもっている人に連絡を取ってみると交流が楽しめるかもしれません。#LGBT#ゲイ#レズビアン#セクマイ といったハッシュタグで検索してみましょう。

新しくアカウントを作る際には非公開設定にすると、リアルな家族や友達にアカウントがばれてしまうのを防げます。

 

オンラインコミュニティに参加する

こちらもSNSと同様にオンラインから始められるため、ハードルは低いと思います。コミュニティはLGBT当事者もしくはアライ(LGBT支援者)の人たちばかりなので安心できるはずです。

 

かず部屋

YouTuberかずえちゃん主宰のLGBTとアライ(支援者)向けオンラインコミュニティ。

 

Comfy

LGBT当事者向けコミュニティサイト。様々なジャンルが用意されているので共通の趣味を持つ人を探しやすいと思います。

 

Tsunagary Cafe

LGBT当事者向けコミュニティサイト。関西方面でイベントが開催されています。

 

コミュニティに参加する

オンラインではなくリアルで開催されているコミュニティも全国各地にあります。

 

一般社団法人にじーず

10代から23歳までのLGBT当事者(かもしれない人を含む)だけが参加できるコミュニティ。

 

一般社団法人ハレルワ

群馬県で交流会や居場所事業、LINE相談などさまざまな活動を行っています。

 

特定非営利活動法人日本セクシュアルマイノリティ協会(EESa!(イーサ))

あらゆる性の人が参加できる協会で、名称をEESa!(イーサ)に変更中です。勉強会、交流会だけでなく啓蒙活動、ボランティア活動、LGBT向け暮らしのサポートなど多彩な活動を行っています。

 

カラフル@はーと

LGBTQ当事者で精神疾患、発達障害、依存症(アルコール・薬物・性行動、他)などの問題を抱える方のための、自助グループです。東京都中野区で当事者同士の交流会「カラフルミーティング」を実施しています。

 

地元の掲示板ジモティーを使う

インターネット掲示板「ジモティー」で「LGBT」と検索すると、LGBT関連のサークルのメンバー募集から友達募集までさまざまな投稿が表示されます。都道府県選択ができますので、ぜひ最寄りの都道府県を選択した上で、検索してみてください。

こくちーずプロを使う

イベント・イベント告知サイト「こくちーずプロ」ではLGBTイベント特集を行っています。全国の交流会や相談会などの情報が掲載されていますので、近所のLGBTに関するイベントを探してみましょう。

 

アプリを使う

スマートフォンで利用するアプリを利用する方法があります。

・Tinder

位置情報を利用して、近くの人を探すことができるアプリです。自分の性別、相手の性別を自由に選択できるため、多数派である異性愛者だけでなく、LGBTの人にも使いやすくなっています。

 

・GEMP

LGBT当事者に特化したアプリで、友達探し、パートナー探し、お悩み相談など様々な用途で利用できます。

 

トラブルが起きた場合の対処方法

トラブルが起きてしまった場合の相談先をご紹介します。警察、法律相談、HIVの相談、病気の相談先となります。各都道府県や自治体には人権、男女共同参画といった部署があります。そちらに相談しても良いでしょう。

警察相談専用電話

警察というと緊急時(事件、事故)の110番か、免許証関連の事務手続きという印象しかもっていない人も多いと思います。しかし、緊急ではない相談希望者は、#9110とダイヤルすると警察相談専用電話につながります。ストーカー、DV、悪質商法などさまざまな相談に応じてもらえます。必要に応じて法テラス、消費生活センター、女性相談所などの専門機関への引き継ぎや紹介もしてもらえます。

弁護士によるLGBTQ+の法律相談

プライドハウス東京レガシーで毎月2回LGBTフレンドリー弁護士により行われている無料対面相談。

セクシュアル・マイノリティ電話法律相談

LGBTの法律問題に詳しい東京弁護士会による電話法律相談です。相談は無料となっています。

HIV関連の相談先

「HIV検査・相談マップ」にHIV関連の相談先一覧がまとめられています。HIVに関する相談をしたい方はぜひご覧ください。HIV全般、HIV陽性者の方、パートナー・ご家族の方、同性愛者、外国人などによってリンクが分類されていて使いやすいです。

しらかば診療所

ゲイを公表されている井戸田氏が院長の診療所。曙橋駅の近くにあります。

一般内科・感染症内科・形成外科・皮膚科・精神科があります。



おわりに

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LGBT当事者にはさまざまな問題が付きまといます。生きづらさ、将来設計、ロールモデルの不在、人間関係、アウティング、セクシャルハラスメントなど問題の種類は多岐にわたります。1人暮らしをするLGBT当事者の方で、不安を感じている方はぜひとも不安の原因に応じたサポートを受けてみてはいかがでしょうか。

1人で悩んでも解決できない、もしくは相談して適切なアドバイスをもらった方が楽になれる問題もあります。対面面談のハードルが高い方は、電話やオンライン相談を実施している機関もあるので、そちらを利用してみてはいかがでしょうか。