「そろそろ2人で家を買いたい」
同性カップルの当事者の方々から、IRISにはこうしたご相談を数多くいただきます。ただ、住宅購入を考え始めたとき、多くの方が最初に不安を感じるのも事実です。
「同性カップルでも住宅ローンは組めるのか」
「2人の名義で購入できるのか」
「もしどちらかに万が一があったら、家はどうなるのか」
異性夫婦であれば当然のように進む手続きでも、同性カップルの場合は、事前に確認しておくべきポイントがいくつか存在します。
もっとも、これは「買えない」という意味ではありません。
実際には、パートナーシップ制度への対応を進める金融機関も増えており、ローン実務や相続対策のノウハウも少しずつ蓄積されています。適切な設計を行えば、同性カップルでも住宅購入を実現することは十分可能です。
大切なのは、「どこで課題が起きやすいのか」を知り、事前に対策を講じることです。
この記事では、同性カップルが住宅購入を検討する際に押さえておきたい、
・法律上のポイント
・住宅ローン実務
・相続対策
・実際の購入事例
・活用できる制度や考え方
を、実務ベースで整理していきます。
同性カップルが住宅購入で壁にぶつかりやすい理由
同性カップルが住宅購入で悩みやすい最大の理由は、日本では現在、同性同士の法律婚が認められていない点にあります。
日本の民法739条では、「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」と規定されています(出典:e-Gov法令検索・民法)。つまり、法律上の婚姻関係を前提として設計されている制度については、同性カップルがそのまま利用できないケースがあるのです。
これは住宅購入にも影響します。
例えば、
・住宅ローンの組み方
・連帯保証人の扱い
・相続権
・税制優遇
・団体信用生命保険(団信)
・共有名義の設定
などは、法律上の「配偶者」であることを前提に制度設計されている部分があります。ただし近年は、金融機関・自治体・保険会社の対応も進み、「同性カップルだから利用不可」というケースは以前より大きく減っています。
特に大手金融機関では、
・パートナーシップ認定証への対応
・ペアローンへの対応
・収入合算の柔軟化
・同性パートナーを団信受取人として認める運用
など、実務上の整備が進みつつあります。
一方で、対応状況には金融機関ごとの差も大きく、同じ銀行でも支店や担当者によって説明内容が異なるケースもあります。そのため、「どこの銀行なら通りやすいか」だけではなく、
・どのローン形態を選ぶか
・誰を主債務者にするか
・持分をどう設計するか
・相続対策をどう組み合わせるか
まで含めて、全体設計を行うことが非常に重要になります。
パートナーシップ制度はどこまで使えるのか
こうした法律上のギャップを補う制度として広がっているのが、自治体によるパートナーシップ制度です。
2015年に渋谷区・豊島区で始まって以降、現在では全国200以上の自治体に導入が広がっています。
この制度によって、
・金融機関での配偶者同等扱い
・病院での家族対応
・一部保険契約
・住宅関連サービス
などで活用できるケースが増えています。
実際に、パートナーシップ認定証を提出することで、
・ペアローン
・収入合算
・連帯債務型ローン
の利用が可能になった事例も少なくありません。
ただし、ここで注意したいのは、パートナーシップ制度は「法律婚そのもの」ではないという点です。
例えば、
・法定相続権
・配偶者控除
・相続税の配偶者軽減
などは、現時点では原則として適用されません。
そのため、住宅購入では、
「ローンが組めれば終わり」
ではなく、
・相続
・保険
・持分
・遺言
・税務
まで含めて設計する必要があります。
逆に言えば、そこを整理できれば、かなりの部分は実務上カバー可能になっています。
「共有名義」と「単独名義」どちらがよいのか
同性カップルの住宅購入で、特に重要になるのが名義設計です。
よくあるのは、
・共有名義
・単独名義
のどちらにするべきか、というご相談です。
共有名義の場合、2人とも所有権を持てるため、「2人の家」としての安心感があります。また、ペアローンを利用することで、それぞれが住宅ローン控除を受けられるケースもあります。
一方で、共有名義では「持分比率」の設定が非常に重要です。
例えば、
・頭金はどちらが出したか
・毎月の返済負担割合
・諸費用を誰が支払うか
といった実態と、登記上の持分割合が大きくズレていると、税務上「贈与」とみなされる可能性があります。
そのため実務では、「なんとなく半分」ではなく、実際の出資割合に合わせて持分を設計することが重要になります。
一方、単独名義の場合はローン審査が比較的シンプルになりやすい反面、名義のないパートナーには所有権がありません。
そのため、
・公正証書遺言
・生命保険
・死因贈与契約
などを組み合わせ、将来への備えを行うケースが一般的です。つまり、「共有名義が正解」「単独名義が正解」という単純な話ではなく、
・年収バランス
・勤続年数
・親族関係
・将来設計
・税務リスク
・相続対策
を踏まえて設計することが大切なのです。法律や制度が完全ではないからこそ、事前設計によって大きく差が出ます。そして実際には、適切な準備を行い、自分たちらしい住まいを実現している同性カップルは、確実に増えています。
ローン審査で実際に起きやすいポイント
同性カップルの住宅購入で、特にご相談が多いのが住宅ローンです。
最近では、大手銀行を中心にパートナーシップ制度への対応が進み、「同性カップルだから審査不可」というケースは以前よりかなり減っています。
ただし、実務上は金融機関ごとに考え方や運用差があります。
例えば、
・ペアローンが利用できる銀行
・収入合算のみ対応可能な銀行
・パートナーシップ認定証が必須の銀行
・自治体要件がある銀行
など、条件はさまざまです。
また、同じ金融機関でも、
・支店
・担当者
・保証会社
によって説明が異なるケースもあります。
そのため、「どこの銀行なら通るか」というより、
「自分たちの状況にどのローン設計が合うか」
を考えることが重要になります。
ペアローン・収入合算・連帯債務の違い
同性カップルの住宅購入では、主に次のようなローン形態が検討されます。
ペアローン
2人がそれぞれ別々に住宅ローンを組み、互いに連帯保証人となる方式です。
メリットとして、
・双方が住宅ローン控除を利用できる
・借入可能額を増やしやすい
・持分を整理しやすい
といった点があります。
一方で、
・事務手数料が2本分必要
・片方が退職した場合の負担変化
・関係解消時の整理
などには注意が必要です。
収入合算
どちらか一方を主債務者とし、もう一方の収入を合算して審査する方法です。
ペアローンより契約がシンプルになりやすく、諸費用も抑えやすい傾向があります。
ただし、
・住宅ローン控除
・団体信用生命保険(団信)
の扱いは金融機関によって異なります。
特に団信は非常に重要です。
例えば、主債務者に万が一があった場合、ローン残債がゼロになる商品もありますが、収入合算者側には適用されないケースもあります。
「どちらが亡くなった場合に、どの負担が残るのか」
まで含めて確認しておくことが重要です。
単独ローン
どちらか一方のみでローンを組むケースです。
審査は比較的シンプルですが、もう一方には法的な所有権がないため、
・遺言
・生命保険
・死因贈与契約
などを組み合わせた設計が重要になります。
特に中古マンションや戸建て購入では、
「まずは単独ローンで購入し、将来的な制度変化も見据えて設計する」
という考え方を取るケースもあります。
相続対策は「後から」ではなく「購入時」に考える
同性カップルの住宅購入で、最も大きな差が出るのが相続対策です。
法律上の婚姻関係がない場合、パートナーは原則として法定相続人になりません。
つまり、何も準備をしていないと、
「一緒に住み続けられなくなる」
可能性があります。
ただし、これは事前設計によってかなりリスクを減らすことができます。
実務上、よく組み合わせられるのは次の3つです。
1.公正証書遺言
もっとも基本となる対策です。
特に不動産が絡む場合、自筆遺言よりも、公証役場で作成する公正証書遺言のほうが実務上は安全性が高くなります。
・形式不備リスクが低い
・検認手続きが不要
・金融機関や司法書士との手続きがスムーズ
といったメリットがあります。
2.生命保険
住宅ローン残債や生活費への備えとして活用されるケースが多くあります。
最近では、同性パートナーを受取人として指定可能な保険商品も増えています。
特に、
・ローン残債対策
・住み替え資金
・相続トラブル時の現金確保
として重要な役割を果たします。
3.死因贈与契約
「亡くなった場合に財産を渡す」という契約を生前に締結する方法です。
遺言と併用されるケースも多く、
・意思を明確化しやすい
・契約として残せる
という特徴があります。
実際には、同性カップルの購入事例は増えている
ここまで読むと、「かなり大変そう」と感じるかもしれません。
ただ、実際の現場では、同性カップルの住宅購入は年々増えています。
IRISでも、
・都心マンション購入
・戸建て購入
・住み替え
・投資用不動産
・事務所兼住宅
など、さまざまなご相談をいただいています。
そして実際には、
「最初は不安だったけれど、整理してみたら普通に購入できた」
というケースも非常に多くあります。
特に最近は、
・金融機関の理解向上
・自治体制度の拡大
・LGBTs対応保険商品の増加
・不動産会社側の理解向上
など、数年前と比べて実務環境はかなり前進しています。
同性カップルが家を購入するメリット
住宅購入には、法的課題だけでなく、多くのメリットもあります。
1.資産形成につながる
賃貸と違い、住宅ローンの返済は将来的に資産として残ります。
特に都心部では、
・売却
・住み替え
・賃貸化
など、ライフプランに合わせた選択肢も持ちやすくなります。
また、老後の住居費負担を減らせる点も大きなメリットです。
2.「2人の暮らし」を形にできる
同性カップルにとって、「家を持つ」という行為には、単なる不動産取得以上の意味があります。
・共有名義
・同じ住所
・生活基盤の共有
は、「2人で生きていく」という意思を具体的な形にするものでもあります。
実際に、
「家を買ったことで将来像が明確になった」
と話される方も少なくありません。
3.自分たちらしい暮らしを設計できる
同性カップルの場合、
・ペットとの暮らし
・在宅ワーク
・趣味空間
・来客動線
・プライバシー性
などを重視して住まい探しをされるケースも多くあります。
購入であれば、「こう暮らしたい」を住まいに反映しやすくなります。
これは、単なる資産形成ではなく、「自分たちらしい人生設計」にもつながっています。
制度が完全ではないからこそ、「事前設計」が重要になる
同性カップルの住宅購入では、法律や制度がまだ完全に追いついていない部分があります。
ただ、それは「家を買えない」という意味ではありません。
実際には、
・金融機関の対応拡大
・自治体制度の整備
・保険商品の見直し
・不動産実務の蓄積
によって、同性カップルが住宅を購入できる環境は、数年前と比べて大きく前進しています。
一方で、
・どの銀行を選ぶか
・どのローン形態にするか
・共有名義にするか
・相続対策をどう設計するか
によって、将来の安心感が大きく変わるのも事実です。
だからこそ、「物件を探す前」の段階から、全体設計を整理することがとても重要になります。
住宅購入は、単に家を買うことではありません。
「どんな暮らしをしたいか」
「どんな将来を築いていきたいか」
を、2人で具体的に形にしていくプロセスでもあります。
IRISでは、同性カップル・LGBTs当事者の住宅購入について、
・住宅ローン
・名義設計
・金融機関選定
・相続対策
・ライフプラン
まで含め、実務ベースでサポートを行っています。
「自分たちの場合はどうなるんだろう」
「まずは話だけ聞いてみたい」
そんな段階からでも大丈夫です。
制度だけを見ると、不安に感じることもあるかもしれません。
でも実際には、適切な準備を行い、自分たちらしい住まいを実現している同性カップルは、確実に増えています。
家を持つことは、「普通になること」ではなく、「自分たちらしく安心して暮らせる場所をつくること」。
その選択肢を、あきらめる必要はありません。






