はじめに - 静かな住宅街に響く鳥の鳴き声と新しい生活

多摩川のほとりに広がる静かな住宅街。朝になると、まるで森の中にいるかのような鳥の鳴き声が響きます。築50年ほどの古い住宅地の中に建つ新しい一戸建てに、お二人は1年と3ヶ月前から住んでいらっしゃいます。

「引っ越しして、去年の5月の末あたりだったので、もう1年くらい経ちますね」

お話を伺ったのは、日野市にお住まいの男性同士のカップル。4LDKの一戸建てを購入し、現在はアメリカから養子を迎える準備を進めながら、新しい生活を築かれています。

お引越し後の感想を伺うと、「街の雰囲気がすごくいいです。住み出してからもそれはすごい実感していて、とても便利です」と満足そうにお話しくださいました。

※お客様のプライバシー保護のため、一部内容を変更しています。

複数の背景が重なって家の購入を決断

年齢という現実と将来への不安

家購入を決意された背景には、複数の要因が重なっていました。

「一番大きい後押しは年齢でした。もう30年ローン、35年ローンが見えなくなってくる年齢に達していたので、それが一番大きかったかもしれません」

50歳を前にして、住宅ローンを組める期間が限られてくる現実。多くの方が直面する問題ですが、同性カップルの場合、将来への不安はより複雑です。

「賃貸だとずっと住み続けられる権利がないですし。自分の家だったら、もうちょっと違うのかなと思いました」

子どもを迎えるために必要な住環境を準備することに

家購入を決意されたもう一つの大きな理由は、アメリカからの養子縁組でした。

「養子に迎える時に、(養子の受け入れ元である)アメリカは条件面が厳しくて、一人ひとりに自分の個室がないとダメなんです。前に住んでいたところは2LDKだけだったので、少し狭すぎるのではと感じていました」

アメリカの養子縁組では、6歳未満の子どもに限定され、子どもには専用の部屋が必要という厳格な規定があるそうです。2LDK約60平米の賃貸マンションでは、この条件をぎりぎりで満たしてはいましたが、実際生活していく上では、狭いと感じていました。

「毎月、養子縁組エージェンシーから、今月は10名の母親からの募集がありますというレポートが送られてきます。でも、同じようにアメリカ本土にも沢山の待機家族がいて、10年近く待っている方もいらっしゃるんです」

養子を迎えるための準備は想像以上に複雑で、時間もかかります。そのためにも、適切な住環境を整える必要がありました。

近隣トラブルからの脱却

以前お住まいだった23区内の一軒家での生活では、近隣との関係に悩まされていました。

「家が近すぎて、隣の家の喧嘩が聞こえるくらいでした。トイレやシャワーの音まで全部聞こえてしまって」

「隣のおじさんが、毎日のように塀の向こうから我々の生活を覗いてくるようなことをしてきて、何かチェックされているような感じで、ちょっと怖かったです」

賃貸では、こうした問題があっても根本的な解決は難しく、「賃貸だから、喧嘩になっても我々の方が立場が弱い」という無力感を持っていらっしゃいました。

経済的な判断 - 超低金利時代の好機

「家賃も上がっていっているし、賃貸だとこれは損するなと感じていました。購入を検討した時期は、超低金利の時期でもあったので、買わないともったいないという感覚もありました」

経済的な判断も重要な要因でした。コロナ禍での超低金利政策により、住宅購入には追い風が吹いていた時期でもありました。

IRISとの出会い - LGBTフレンドリーな不動産会社を求めて

賃貸で経験した困難 - 理解のない不動産業界

家を購入する前に、お二人は賃貸探しでも大きな困難を経験されていました。

「最初は、二人の関係性がどうであれ、収入(与信条件)がしっかりしていれば賃貸物件を借りることができるだろうと思っていました。でも、外国籍の同性パートナーと一緒に住む予定だと伝えると、ことごとくNGでした」

「大手不動産会社のM社でもお願いして、あんなにLGBTsフレンドリーをアピールしているのに、ダメでした。非公式に、ということで教えてくれたのですが、オーナーさんが全く理解を示してくれていないと謝られました」

与信に問題がなくても、外国籍であることや同性カップルであることを理由に、次々と断られる現実。表向きはLGBTフsレンドリーを謳っていても、実際には対応できない不動産会社が多いことを痛感されました。

インターネットで見つけた希望の光

「インターネットで調べて、IRISさんがLGBTsフレンドリーな対応をしてくれている会社だと知りました」

絶望的な状況の中で、インターネットの情報でIRISを見つけます。

「すぐに返信も返ってきてくれて、信頼性は高かったです。その経験があったので、購入の時も、一番最初に相談したいのはIRISだよねという共通認識がありました」

賃貸での成功体験が、購入時の信頼へと繋がっていきました。

他社との比較で見えた差

実際に他の不動産会社との比較も行いましたが、その差は歴然でした。

「他の会社の営業は本当にひどかった。理解しようともしていないし、売ることに対してもあまり興味がないような感じでした」

対照的に、IRISでは最初から理解のある対応を受けることができました。

エリア選定と物件探し - 理想の住環境を求めて

予算と利便性のバランス

「金額帯から考えて、東京都内は厳しいなという感じでした。でも、仕事場が都心になるので、新宿に30分くらいで行けるところを探していました」

お二人の職場は都心部。通勤の利便性を考慮しつつ、予算内で4LDKを確保できるエリアを探す必要がありました。

「小田急線や東急線も検討しましたが、高すぎて無理でした。京王線や中央線、西武新宿線を中心に探しました」

エリアが決まるまでの道のり

最初にご案内したのは西武新宿線沿線でしたが、街並みが気になりました。

「西武新宿線沿線は、生活利便性という点でマッチしませんでした。駅前の商業施設の状態などを含めて、何より外食が好きな私たちには物足りませんでした」

「見てきた物件のエリアは、これからの開発に期待という雰囲気でしたね」

転機となったのは、今回ご購入された日野市エリアの物件紹介でした。

「当初はもうちょっと都心寄りを考えていましたが、日野市周辺を紹介していただいて、候補としてはどうですかと提案されました」

「別の物件を見に行った時に、今の家を見つけて、『いいのあるじゃん』となって、そんなに迷うことなく『これだ』という感じで決めました」

決め手となったポイント - 理想が現実となった瞬間

間取りとリビングの広さ

「決め手は部屋の間取りでした。4LDKを探していたのと、リビングのサイズ感で探していたので」

家族構成の変化を見越した4LDKという条件は絶対でした。養子を迎える準備として、十分な部屋数は必須条件だったのです。

街の利便性と環境の両立

「少し歩いたら百貨店があって、結構充実した買い物ができるので、全然生活に不便を感じることがありません」

「最寄り駅と反対側になりますが、ちょっとくらいなら全然問題ありません」

都心への通勤アクセスを保ちながら、日常生活に必要な施設が揃った環境は理想的でした。

「多摩川がすぐそばにあって、自然もすごく近い感じがします。朝も鳥の鳴き声がすごくて、森の中みたいな感じです」

都市部での生活でありながら、豊かな自然環境を享受できることも大きな魅力でした。

「庭の面積も希望通りで、隣の家との距離もあるから、何も聞こえません」

以前の住環境での苦労を経験されているだけに、プライバシーが確保できることの価値は計り知れませんでした。

購入手続きの体験 - 複雑な状況を乗り越えて

住宅ローンの困難

住宅購入で最も苦労されたのは、住宅ローンの手続きでした。

「購入した時に、ちょうど3件目の投資マンションを買ったばかりだったので、住宅ローンの審査が厳しかったです」

「相談したネット銀行は、他でローンが1億円あったら、自動的に貸してくれないという説明を受けました」

投資用不動産のローン残高により、通常の住宅ローンでの審査が困難になっていました。

解決策の提案

「投資用物件を購入していた会社から紹介していただいた金融機関の支店で、所持している不動産を評価することができる保障のローンという形で借りることができました」

通常の住宅ローンが難しい状況でも、代替案を提案してもらえたことで、購入を実現することができました。

「ただ、その銀行のシステムが古くて、3回くらい支店に行って、毎回2-3時間かけて手続きしました。ネット銀行だったらクリックで終わったはずなのに、あまりにも大変で体調も崩してしまいましたね(笑)」

手続き自体は大変でしたが、購入を実現するための必要なプロセスとして乗り越えられました。

新しい生活の実際 - 理想と現実

近隣との関係

新しい住環境での近隣関係は、予想通り静かなものでした。

「住宅地としての開発が非常に歴史ある場所なので、周りの方の年齢層が高く、本当に音の問題は何もありません。8時以降は周囲の家々も大体真っ暗で、皆さん早く寝ていらっしゃる雰囲気です」

「最初ご挨拶に伺ましたが、ご高齢すぎて我々の関係性について理解が難しかったようで、トラブルというほどのことはありませんが、フレンドリーという雰囲気でもありませんでした。ただ、今後人が入れ替わってきたら変わるのかもしれません」

外国籍であることや同性カップルであることに対する視線は感じるものの、直接的なトラブルはありません。

「外国人がここに住んでいることに対する驚きの視線はありますが、距離があるので、家の中では全然気になりません」

生活の質の向上

「食べるところがとんでもなく充実しています。毎週食べに行っても、全然制覇できないくらい、いいお店がたくさんあります」

「以前住んでいた23区内のエリアより、こちらの方が使えるお店が多くて、全然楽だと感じますね」

生活の質は大幅に向上し、特に食事やショッピングの選択肢の豊富さは予想以上でした。

今後の展望 - 家族を迎える準備

住環境の改善計画

「全部洋室になっているので、1つ和室に変えたいですね。海外から来るお客さんも多いので、和室があったらいいなと思います」

「お庭も全然手をつけていない状態なので、少しずつやっていきたいです」

住み始めてから1年余り、徐々に理想の住環境に近づけていく計画を立てています。

養子縁組の準備状況

「毎月、養子縁組エージェンシーから報告が送られてきて、それを確認しています。アメリカ本土にも待機している家族がたくさんいるので、マッチングがいつになるかはわかりません」

「もう一つ別のエージェンシーにもお願いすることも検討しています」

養子を迎える準備は着々と進んでいますが、時間がかかるプロセスであることも理解されています。

子育て環境への不安と期待

「小学校や幼稚園が少し遠いのが気になります。反対側は日野市ではなく、別の自治体になってしまいます」

「保育園や幼稚園で、同性カップルの家庭というのは見たことがないので、どんな反応をされるかは未知数です」

教育環境については不安もありますが、「10年以内に若いファミリーがもっと引っ越してきて、交流できるようになれば」という希望も持っています。

同性カップル・LGBTsの方へのメッセージ

物件探しのタイミングについて

「タイミングを見計らうのが一番難しいと思います。物件がどのくらい市場に出ているかという感覚は、相談しながら学習しておいた方が楽です」

「どんなペースで物件が出てきて、自分たちはどのタイミングまでに欲しいのかを決めておかないと、いい物件が出てきたときに決めきれないと思います」

不動産市場の動向を理解し、自分たちの希望を明確にすることの重要性を強調されています。

優先順位の明確化

「最初はお互いの希望がすれ違うこともありました。『これはいいけど、これは嫌』という感覚で、結局、色々な物件を見ていって、二人で『この方向だね』というのがわかりました」

「何が一番大事なのかリストを作って、実際に見に行くと、『やっぱりいいよね』とか『これは譲れない』ということがはっきりします」

パートナーと十分に話し合い、優先順位を明確にすることで、決断しやすくなります。家族構成の変化や将来のライフスタイルを考慮した住宅選びの重要性は間違いないとのこと。

LGBTフレンドリーな不動産会社の重要性

「理解のない不動産会社だと、毎回説明するのが正直面倒です。最初から理解してくれる会社を選ぶことで、ストレスなく進めることができます」

「同性カップルの住宅購入は、一般的なケースと異なる部分もあります。経験豊富で理解のある会社を選ぶことが成功の鍵です」

おわりに - 新しい時代の家族の形

お二人の体験談から見えてくるのは、同性カップルの住宅購入における様々な課題と、それを乗り越えた先にある豊かな生活です。

法的な制約や社会的な理解不足など、まだまだ課題は多く存在します。しかし、理解ある不動産会社や金融機関と出会い、適切なサポートを受けることで、理想の住まいを手に入れることは決して不可能ではありません。

「養子を迎えることで、また違う世界が広がると思います。子どもを育てたいという気持ちは、血の繋がりよりも大切だと思っています」

多様な家族の形が認められる社会へ向けて、お二人の体験は貴重な先例となるでしょう。静かな住宅街に響く鳥の鳴き声とともに、新しい時代の家族の物語が始まろうとしています。

これから住宅購入を検討される同性カップルやLGBTsの方々にとって、お二人の体験が希望の光となることを心から願っています。理解ある不動産会社との出会い、十分な準備と情報収集、そしてパートナーとの十分な話し合いを通じて、きっと理想の住まいを見つけることができるはずです。