IRISお客様インタビュー:神奈川県横浜市・中古マンション購入
今回お話を伺ったのは、神奈川県横浜市で中古マンションを購入された30代・40代の同性パートナー関係のお二人。10年間住んだ賃貸物件から、在宅勤務に適したより広いお住まいを求めて住宅購入を決断されました。
一方はトランスジェンダーで外国籍、もう一方は日本国籍。お二人とも会社員として働きながら、趣味のジャグリングを楽しむなど、ごく普通の日常を送られています。しかし、同性パートナーとしての住宅購入には、想像以上の困難が待ち受けていました。
2年間の物件探しを経て、IRISでの購入に至るまでのリアルな体験談を、率直にお聞かせいただきました。
▶ 3LDKの使いやすい間取りです
※お客様のプライバシー保護のため、一部内容を変更しています。
購入までのエピソード
駐車場しか見えなかった1階から、富士山の見える窓辺の家へ
夕方になると、西側の窓から美しい夕日が見えます。富士山のシルエットが遠くに浮かび、鶴見川がゆったりと流れています。横浜市内、新横浜へのアクセスも良いこの場所で、お二人は心地よい日々を送っています。
「前に住んでいたところは1階だったので駐車場しか見えなかったんです」
そう話すお二人の表情は、心から満足しているように見えました。この景色を手に入れるまでには、長い道のりがありました。2年にも及ぶ物件探し、数々の困難、そして希望を失いかけた瞬間。それでも諦めなかった先に、今の暮らしがあります。
▶ 静かで眺めの良いマンションでお二人らしい生活をされていらっしゃいました
10年住んだ賃貸が手狭に、在宅勤務で始まった当たり前の願い
10年間住んでいた賃貸が手狭になりました。二人とも在宅勤務をするようになり、それぞれが仕事をするスペースが必要でした。ごく当たり前の理由で始まった住まい探し。より良い住空間を求めて、今より良い物件を求める。誰もが経験する、人生の自然な流れでした。
「当時住んでいた賃貸物件が10年ほど経って新しいところに住みたいと思っていたことと、二人とも在宅勤務でより広い間取りの物件を探したいと思っていました」
シンプルで、誰にでも理解できる動機です。しかし、同性パートナー関係である彼女たちにとって、それは決して「普通」の体験ではありませんでした。
最初は賃貸か購入かも決まっていませんでした。ただ、より良い住環境を求めていただけです。それがどれほど困難な道のりになるか、この時はまだ知りませんでした。
▶ ワークスペースもセンスの良さが光ってます!
ポータルサイトの現実、築50年か家賃月30万円、選択肢は両極端のみ
物件探しを始めて気づいたのは、選択肢の少なさでした。不動産ポータルサイトで「LGBTフレンドリー」物件の検索をかけてみます。出てくるのは築50年の木造アパートか、月30万円を超える高級物件ばかりです。
「予算的にも手が届いて、希望条件にもある程度沿った“ちょうどいい物件”がない」
極端な選択肢しかない現実に直面します。まるで「住んでくれる人がいないから誰か来て」という物件か、「これぐらいお金を出せば誰でも歓迎」という物件しか選べないかのようでした。普通の予算で、普通の希望を叶えてくれる物件が見つからないのです。
そもそも、なぜLGBTフレンドリーという特別なカテゴリーで探さなければならないのでしょうか。なぜ自分たちは「普通」に物件を探すことができないのでしょうか。疑問は膨らんでいきます。
実際に不動産会社に問い合わせをしてみると、さらに現実の厳しさを知ることになりました。内見すらさせてもらえません。審査で弾かれます。理由は明確には言われませんが、何となく察することができました。
不動産会社からの提案「男性親族との偽装同居なら審査通りますよ」
そして、ある不動産会社から提案されたのは、驚くべき「解決策」でした。
「女性同士だと審査が通らないから、私と私の男性親族が2人で住んでいるという申請の仕方をして、実際は2人で住んでいるけれども、そこがバレないような感じで生活するという方法があります」
その瞬間、何かが音を立てて崩れた気がしました。
「ありえないな、と思いました」
2人の関係性を否定し、隠し、偽ってまで住む場所を得なければならないのでしょうか。それは家を借りることではなく、自分たちの存在を消すことでした。「2人の関係性が尊重されない形で、システムに屈する形で契約をするのは、絶対に受け入れがたい」。そんな思いが心の奥から湧き上がりました。
▶ 男性親族との偽装同居を勧められて心底がっくり来たそうです
やる気になるも打ちのめされて物件探しをやめる、2年間の挫折サイクル
物件の更新が近づくたびに、物件探しにやる気になるので探しますが、そのたびに打ちのめされて、一旦距離を置く。その繰り返しが2年ほど続きました。
「多分更新の期間、タイミングぐらいに合わせて、8年目から10年目の間ぐらいに、新しい物件探すぞと、やる気になった時にやって、でも毎回嫌な体験をして打ちのめされて、ちょっと一旦物件探しから距離置こうっていう、なんかそれを何回か繰り返して。エネルギーを奪われるので、毎回。」
物件探しは、本来なら楽しいはずの作業でした。新しい生活への希望に満ちた時間のはずでした。しかし、彼女たちにとってそれは、自分たちの存在を否定される体験の連続でした。
一回、賃貸でもいいやとある物件に申込をしたこともありました。前に住んでいたところの近くで気に入った物件があったからです。でも、ダメでした。通りませんでした。理由は教えてもらえません。ただ、「この辺り」の人たちには向かない物件だということだけが伝わってきます。
「基本的に男女カップルとか優先なのかな。そっちの方が安全に見えるとか?」
自分たちが「安全ではない」存在として見られていることを、痛いほど感じていました。審査はブラックボックスなので、確かに実際何がどのように審査されているのかは誰にもわかりません。
同性のパートナー関係にある人と接したことのない人たちにとって、自分たちは「わからないもの」であり、「リスク」として扱われていることを理解していました。
IRISとの出会い
検索1位に現れた最後の希望「ここでダメなら諦めるしかない」
そんな時、検索で見つけたのがIRISでした。「LGBTフレンドリー 住宅」という言葉で検索すると、一番上に出てきます。
「最後の手段じゃないけど、多分ここでダメだったらもうダメなんだろうな」
そんな気持ちで連絡をしてみることにしました。これだけ専門的にやっていると言っているなら、ここができなければ本当に無理なのでしょう。アンケートでも「不動産会社への相談のしにくさ」「同性パートナー関係であることによる契約上の不安」を挙げていた彼女たちにとって、IRISは文字通り最後の砦でした。
友人からも、同じく性的マイノリティの人から、こういう不動産屋さんもあるよという情報をもらったことがありました。でも、具体的な情報ではありませんでした。IRISは、具体的に組織だって活動している会社として、唯一の選択肢に思えました。
ウェブサイトを見てみます。働いている人の写真が載っています。カミングアウトしている人のプロフィールもあります。得体の知れない会社ではありません。でも、それでも問い合わせするのには勇気が必要でした。これまでの経験があるからです。
初回相談の驚き「カミングアウトしなくても家探しができる」
初回の相談で感じたのは、意外な「普通さ」でした。
これまでの不動産屋では、自分たちの関係性やセクシャリティを説明しなければなりませんでした。カミングアウトは常に緊張を伴います。相手が何者かもわからない状況で、自分たちの最もプライベートな部分を開示しなければならないのです。まるで審査されているような気持ちになります。
しかし、IRISでは違いました。
「そこを一切触れられなかったんです。ごく自然に接してくれて。齋藤さんも自分自身のことをカミングアウトしてくださったので、話の流れで自然と私たちの関係のこともストレスなく伝えられました」
それは新鮮な驚きでした。説明しなくても普通に家探しができるのです。当たり前のことが、当たり前にできます。自分たちから伝えなくても、普通に住まい探しの話ができるのです。
「安心だからこそ、オープンにしやすい」
信頼できる相手だとわかってから、初めて自分たちのことを話せます。そんな安全な環境が、そこにはありました。
担当の齋藤さんがトランスジェンダーであることも大きな安心材料でした。「特にトランスについてのいろんなことが詳しいし、例えば保険とかその辺で、なかなか体験できない」専門性がありました。
お二人は、IRISを選んだ決め手として「LGBTsに理解のある姿勢」「担当者の人柄や対応」「他社にはない専門性」「相談のしやすさ」を挙げていただいています。これまで感じていた不安が一つ一つ解消されていく感覚がありました。
▶ この会議室でいつもご案内しています
専門性と使命感、10年の積み重ねが生んだ希望
「IRISのような専門的な知識と理解を持つ組織の存在、10年という長期間にわたって培われた専門性、当事者が安心して相談できる環境の構築していると思います」
「この購入が終わった後に、ウェブサイト改めて見て、皆さんのコメント読んで、うわ、かっこいいなと思いました」
単なるビジネスではない、社会的使命を持った活動。それに共感し、応援したいと思う気持ちになりました。
ローンを借りるための複数の壁
住宅購入への道のりは、決して平坦ではありませんでした。お互いに「弱点」ともいえる要素がありました。おひとりは外国籍であり、トランスジェンダーでもあります。おひとりは収入面での不安がありました。そして2人は同性パートナーの関係です。
「その状態で本当にうまくいくんだろうか」
「資金計画(ローンなど)」「同性パートナーであることによる契約上の不安」といった不安は山積みでした。しかし、IRISでは一つ一つの課題を丁寧に検討し、解決策を見つけていきます。購入までのステップを具体的に説明されることで、漠然とした不安が具体的な計画に変わっていきました。
賃貸から購入への切り替えは、IRISでの相談がきっかけでした。「購入の場合はこういう手順でやりますよ」という具体的なステップを示してもらえたことで、「こんなにステップがあるんだ」と驚きながらも、「購入もできなくはないな」という実感が生まれました。
パートナーシップ契約という意外な贈り物
住宅購入にあたって、パートナーシップ契約を結ぶことになりました。それは単なる手続き以上の意味がありました。
「お互いの関係を改めて見直せたのも良かった。社会的に示せる関係性を、ちゃんと将来も見据えて考えていく機会が持てた」
本人の意思だけでしか成り立たない関係から、社会的に認められる形へ。それは2人の絆をより深いものにしました。法的な保護は限定的であっても、お互いに対する責任と愛情を改めて確認する大切な機会となりました。
「なんか社会から承認されてない感覚」を抱きがちな同性パートナーたちにとって、パートナーシップ契約は大きな意味を持ちます。それは、社会に対して堂々と自分たちの関係を示すことができる証明でもありました。
実際に購入してみて
近所の公園でのジャグリング、程よい距離感のマンション暮らし
3ヶ月が経った今、2人は心地よい日々を送っています。富士山の見える窓辺で、夕日の美しさに癒される毎日です。引っ越す前は近くに広い場所がなくて諦めていたジャグリングの練習を、引っ越しを機に再開しました。
「この環境自体が穏やかなので、この生活が維持できたらいい」
購入した中古マンションは、2人の理想を満たしてくれていました。広々としたスペースは在宅勤務にも最適で、鶴見川と公園という自然環境も心を癒してくれます。横浜などへのアクセスの良さも、都市生活の利便性を保証してくれていました。
近所の人たちとの関係も良好でした。「管理人さんがすごく親切で、色々とお世話していただいています」。住民同士も程よい距離感で、「みんなそれぞれ別々に行動している感じで、他の人の目を気にしなくていいのが良い意味で安心」できる環境でした。
特に、トランスジェンダーとして生活する中で、周囲の目を気にすることがありましたが、「別にそういう何もなくて」程よい距離感で暮らせていることに安心されています。
▶ 鶴見川も近くにあります
日本の「見えない区別」、いないことにされる当事者たち
振り返ってみると、彼女たちが経験したのは、日本特有の「見えない区別」でした。
「日本ってそんな苛烈な差別が当事者に対してある国ではない」と言われることが多いです。確かに歩いているだけで物を投げつけられることはありません。しかし、一方で「いないことにされる」という差別が存在します。
「そういう人もいるかもしれないけど、身の回りにはいないわ」という態度。遠ざけるような、隠すような差別。それは表面的には見えにくいですが、当事者にとっては深刻な問題でした。
外国籍であることも、また別の不安を生みます。「外国人としてみんな心配させるのかな。なんかいるだけで、この外国人はルール知ってるのかな。わかるのかな」という気持ち。本来はしなくていいことでも、「大丈夫な外国人です」というアピールをしてしまいます。
「それはもう自分の中に起きてる問題。別に周りはなんかプレッシャーかけてるというわけではない」と理解していても、やはり意識してしまいます。ゴミの捨て方一つとっても、より丁寧に意識してやってしまうのです。
今後住宅を購入しようと思う人たちへのメッセージ
最後に、同じような状況にある人たちへのメッセージを聞きました。
「一般の不動産会社で色々と嫌な経験をしたからこそ、自分たちの関係性を伏せたり偽ったりして契約するよりも、関係性がきちんと尊重される形で契約や購入をすることが、自分たちにとっても、ひいては差別や排除のない社会をつくるためにも大切だと思っています。
今の社会では、同性同士の家探しや購入にはどうしても苦労が伴いますが、だからこそ、その関係性を堂々と示し、諦めずに進んでほしいと思います」
力強い言葉でした。困難な道のりを経験したからこそ、説得力があります。自分たちだけの問題ではなく、社会全体の問題として捉え、解決に向けて行動することの大切さを伝えています。
自分らしい住まいから始まる、誰もが自分らしく暮らせる社会への道
インタビューが終わり、2人を見送りながら思いました。「家」とは単なる住む場所ではありません。自分らしくいられる場所、パートナーとの関係が尊重される場所、安心して未来を描ける場所なのです。
富士山の見える窓辺で、2人は自分たちだけの物語を紡いでいきます。それはきっと、多くの人にとっての希望の光になるでしょう。
彼女たちの体験は、同性パートナー関係での住宅購入がいかに困難であるかを示しています。しかし同時に、適切な支援があれば、その困難は乗り越えられることも示しています。IRISのような専門的な知識と理解を持つ組織の存在が、果たす役割は決して小さくないのだと実感しました。
彼女たちの物語は終わりではありません。これからも続いていく日常の中で、彼女たちは自分らしく生きていきます。そして、その姿が次の人たちの希望となり、社会を少しずつ変えていくのです。
2年間の困難な物件探し、数々の拒絶と失望、それでも諦めずに続けた努力。その先にあったのは、今の穏やかな暮らしでした。
「諦めないでほしい」
その言葉は、きっと多くの人の心に届くでしょう。そして、一人一人が諦めずに行動することで、誰もが自分らしく暮らせる社会が実現していくのかもしれません。