ゲイカップルにとって遺言書の作成は、パートナーの将来を守るための最も重要な法的対策です。日本では同性婚が認められていないため、法的には「他人」として扱われるパートナーに財産を残すには、遺言書が不可欠となります。

東京弁護士会によると、法定相続人でない同性パートナーは、遺言書がなければ財産を相続が非常に困難であると記されています。長年連れ添ったパートナーであっても、法的保護がない現状では、遺言書だけが確実な財産承継の手段となります。

本記事では、ゲイの方が遺言を作成する際の具体的な方法、費用、注意点について、法的根拠を示しながら詳しく解説します。パートナーと築いた財産や思い出を確実に引き継ぐために、正しい知識を身につけましょう。

なぜゲイにとって遺言が重要なのか

日本の現行法では、同性カップルは法律婚ができません。国税庁の定める法定相続人は、配偶者と血族のみです。同性パートナーは、どれだけ長く一緒に暮らしていても、法的には「配偶者」になれません。

法定相続人でないパートナーは、遺言書がなければ財産を相続することが困難です。共同で築いた財産も、パートナー名義の預金や不動産は、法定相続人である親や兄弟姉妹に相続されてしまいます。長年一緒に暮らした家から追い出される可能性もあります。

パートナーシップ制度を利用していても、相続権は発生しません。2015年から導入が始まったパートナーシップ制度は、あくまで自治体内での関係性を認める制度であり、法的効力はないのです。パートナーシップ制度では、相続や税制上の優遇は受けられません。

2021年3月の札幌地裁判決では、同性婚を認めない現状は憲法14条の平等権に違反するとされました。しかし、法改正には至っていません。現時点で、ゲイカップルがパートナーに財産を残す確実な方法は、遺言書の作成なのです。

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ゲイカップルが直面する相続の問題

ゲイカップルは、相続において様々な法的・経済的な困難に直面します。これらの問題を理解することで、遺言書作成の重要性がより明確になります。

法定相続人になれない現実

法務局の資料によると、法定相続人の範囲は配偶者と血族に限定されています。第1順位が子、第2順位が直系尊属(親)、第3順位が兄弟姉妹です。同性パートナーは、この枠組みから完全に除外されています。

パートナーが亡くなった場合、法定相続人である親族が全財産を相続します。親族との関係が良好でない場合や、カミングアウトしていない場合は、特に深刻な問題となります。パートナーの存在すら認められず、葬儀への参列を拒否されることもあります。

共同で購入した家であっても、パートナー名義の部分は法定相続人に相続されます。残されたパートナーは、住み慣れた家を失う可能性があります。思い出の品々も、法的には「他人」であるため、受け取る権利がありません。

相続税の負担増加

仮に遺言書でパートナーに財産を残せても、税制上の不利益は避けられません。あいりん司法書士事務所によると、配偶者なら1億6000万円まで相続税がかからない配偶者控除が、同性パートナーには適用されません。

さらに、法定相続人以外が財産を取得する場合、相続税額の2割加算が適用されます。つまり、同性パートナーは通常の相続税に加えて、さらに20%増しの税金を支払う必要があります。例えば、1000万円の相続税が発生する場合、実際には1200万円を支払うことになります。

基礎控除も不利になります。法定相続人がいる場合の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人数」ですが、パートナーは法定相続人でないため、この計算に含まれません。結果として、より多くの相続税を負担することになります。

遺産分割協議への参加不可

遺産分割協議は、法定相続人のみで行われます。同性パートナーは、どれだけ故人と深い関係があっても、協議に参加する権利がありません。故人の意思を最もよく知る人物であっても、発言権すらないのです。

法定相続人が遺言書の内容に不満を持った場合、遺留分侵害額請求をされる可能性があります。弁護士法人サリュによると、配偶者や子、親には遺留分があり、遺言書があっても最低限の取り分が保証されています。

例えば、親が健在の場合、遺産の3分の1が遺留分となります。1億円の遺産があり、全額をパートナーに遺贈する遺言書を作成しても、親は3333万円の遺留分を請求できます。パートナーは、この請求に応じなければなりません。

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遺言書の種類と特徴

遺言書には主に3つの種類があります。それぞれに特徴があり、ゲイカップルの状況に応じて最適な方法を選ぶ必要があります。確実性と安全性を重視するなら、公正証書遺言が最も推奨されます。

公正証書遺言(最も確実)

日本公証人連合会によると、公正証書遺言は公証人が作成する最も確実な遺言書です。公証人という法律の専門家が関与するため、形式不備による無効のリスクがありません。

作成手続きは、まず公証役場に連絡して相談の予約を取ります。必要書類を準備し、公証人と遺言内容を打ち合わせます。作成当日は、証人2名の立会いのもと、遺言者が公証人に遺言内容を口述し、公証人が筆記します。その後、遺言者と証人が署名押印して完成します。

最大のメリットは、原本が公証役場で保管されることです。紛失や改ざんの心配がありません。また、家庭裁判所での検認手続きが不要で、相続開始後すぐに執行できます。

デメリットは費用がかかることです。公証人手数料は財産額に応じて決まり、数万円程度となります。証人を公証役場で紹介してもらう場合は、1人につき1万円程度の追加費用が必要です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が全文を自筆で書く遺言書です。費用がかからず、いつでも作成できる手軽さがメリットです。ただし、形式要件が厳格で、少しでも不備があると無効になるリスクがあります。

法務省の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、法務局で遺言書を保管してもらえます。保管料は3900円で、紛失や改ざんの心配がなくなります。ただし、内容の法的チェックはされないため、形式不備のリスクは残ります。

作成時の注意点として、全文を自筆で書く必要があります(財産目録はパソコン作成可)。日付は「令和○年○月○日」と具体的に記載し、署名と押印が必須です。訂正がある場合は、訂正箇所を二重線で消し、正しい文字を記入した上で、訂正印を押す必要があります。

相続開始後は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。この手続きには1~2か月かかり、その間は遺言の執行ができません。ゲイカップルの場合、法定相続人との関係が複雑なことも多く、手続きが長引く可能性があります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言内容を秘密にしたまま、遺言書の存在を公証役場で証明してもらう方式です。パソコンで作成でき、内容を誰にも知られずに済むメリットがあります。

しかし、実際にはほとんど利用されていません。公正証書遺言のような確実性がなく、自筆証書遺言のような手軽さもないためです。費用は一律11000円ですが、内容の法的チェックはされないため、無効になるリスクがあります。

ゲイカップルの場合、確実性を重視すべきです。秘密証書遺言よりも、公正証書遺言か、法務局保管制度を利用した自筆証書遺言を選ぶことをお勧めします。

遺言の種類 費用 確実性 手軽さ
公正証書遺言 数万円~ 最も高い 手続き必要
自筆証書遺言 0円~3900円 形式不備リスク いつでも可能
秘密証書遺言 11000円 中程度 手続き必要

遺言書作成の具体的な手順

遺言書を作成する際は、事前準備から作成後の管理まで、計画的に進める必要があります。特にゲイカップルの場合、法的な複雑さがあるため、専門家のサポートを受けることが重要です。

事前準備

まず、財産の棚卸しを行います。預貯金、不動産、有価証券、保険、貴重品など、すべての財産をリストアップします。長岡行政書士事務所では、財産目録の作成から支援しています。

次に、法定相続人を確認します。戸籍謄本を取得し、親、兄弟姉妹など、誰が法定相続人になるかを把握します。法定相続人の遺留分を計算し、どの程度の財産をパートナーに残せるか検討します。

遺言執行者を決めることも重要です。パートナーを遺言執行者に指定すれば、相続手続きをスムーズに進められます。ただし、法定相続人との関係が悪い場合は、弁護士や司法書士などの専門家を指定することも検討しましょう。

パートナーと十分に話し合うことも欠かせません。お互いの希望を確認し、遺言書の内容を共有します。相互遺言(お互いに相手に財産を残す遺言)を作成することも検討しましょう。

必要書類の準備

日本公証人連合会によると、公正証書遺言の作成には以下の書類が必要です。遺言者の印鑑証明書、戸籍謄本、受遺者(パートナー)の住民票、不動産がある場合は登記簿謄本と固定資産評価証明書です。

預貯金については、金融機関名、支店名、口座番号を正確に記載する必要があります。残高証明書は不要ですが、おおよその金額を把握しておくと、公証人手数料の計算に役立ちます。

証人2名の住所、氏名、生年月日、職業も必要です。証人は、未成年者、推定相続人、受遺者(パートナー)、その配偶者や直系血族以外から選ぶ必要があります。適切な証人がいない場合は、公証役場で紹介してもらえます。

これらの書類は、事前に公証役場にファックスやメールで送付することができます。公証人が内容を確認し、遺言書の原案を作成してくれます。作成当日までに修正や追加も可能です。

遺言執行者の指定

遺言執行者は、遺言の内容を実現する責任者です。ベリーベスト法律事務所によると、遺言執行者を指定することで、相続手続きがスムーズに進みます。

ゲイカップルの場合、パートナーを遺言執行者に指定することが多いです。これにより、法定相続人の協力なしに、預金の解約や不動産の名義変更ができます。パートナーが相続財産を確実に受け取るために、重要な役割を果たします。

ただし、遺留分侵害額請求など、法的なトラブルが予想される場合は、専門家を遺言執行者にすることも検討しましょう。弁護士や司法書士なら、法的な知識と経験を活かして、適切に対応してくれます。報酬は遺産の1~3%程度が相場です。

遺言執行者の指定は、遺言書の中で明記します。「遺言執行者として○○を指定する」という文言を入れます。予備的に、「○○が遺言執行者となれない場合は△△を指定する」と記載することも可能です。

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遺言書に記載すべき内容

ゲイカップルが遺言書を作成する際は、パートナーの将来を守るため、詳細かつ明確な記載が必要です。曖昧な表現は、後のトラブルの原因となります。法的に有効で、執行しやすい遺言書を作成しましょう。

財産の特定と遺贈方法

財産は具体的に特定する必要があります。長岡行政書士事務所によると、不動産は登記簿謄本の記載通りに、所在、地番、地目、地積、家屋番号、構造、床面積を正確に記載します。

預貯金は、金融機関名、支店名、預金種別、口座番号を明記します。「○○銀行○○支店の普通預金(口座番号○○)の全額を、○○に遺贈する」という形で記載します。残高は変動するため、金額ではなく「全額」や「2分の1」といった割合で指定することが一般的です。

動産については、「自宅内の家財道具一切」といった包括的な記載も可能です。ただし、特に価値のある美術品や貴金属は、個別に特定することをお勧めします。思い出の品についても、具体的に記載することで、確実にパートナーに引き継げます。

遺贈の方法は、「○○に遺贈する」と明記します。相続人以外への財産移転は「遺贈」という表現を使います。「相続させる」は法定相続人にのみ使える表現なので、同性パートナーには使えません。

祭祀財産の承継者指定

祭祀財産とは、お墓、仏壇、位牌などの祭祀に関する財産です。長瀬総合法律事務所によると、祭祀財産は相続財産とは別扱いで、遺言で承継者を指定できます。

ゲイカップルの場合、パートナーを祭祀承継者に指定することで、お墓参りや法要を行う権利を確保できます。「祭祀財産(墓地、墓石、仏壇、位牌等)の承継者として○○を指定する」と記載します。

将来的に、パートナーと同じお墓に入りたい場合は、その旨も遺言書に記載できます。ただし、墓地の管理規約によっては、法的な家族以外の埋葬を認めない場合があるので、事前に確認が必要です。

散骨や樹木葬を希望する場合も、遺言書に記載しておくと良いでしょう。パートナーが故人の意思に従って、適切に対応できます。葬儀の方法や、参列者の範囲についても、希望があれば記載可能です。

付言事項の活用

付言事項は、法的効力はありませんが、遺言者の思いを伝える重要な部分です。東京新宿法律事務所では、付言事項の活用を推奨しています。

パートナーへの感謝の気持ちや、なぜこのような遺言を残すのか、その理由を記載します。法定相続人に対して、遺言の内容を理解し、尊重してほしいという願いも伝えられます。これにより、遺留分侵害額請求などのトラブルを防ぐ効果も期待できます。

例えば、「○○とは20年間、人生のパートナーとして支え合ってきました。法的な結婚はできませんでしたが、私にとって最も大切な家族です。この遺言が私の意思であることを理解し、尊重していただきたい」といった内容を記載します。

カミングアウトしていない場合は、付言事項で初めて関係性を明かすこともあります。その場合は、より丁寧に、理解を求める文章を記載することが重要です。専門家のアドバイスを受けながら、適切な表現を選びましょう。

遺留分対策

遺留分は、法定相続人の最低限の取り分を保証する制度です。ゲイカップルが遺言書を作成する際、遺留分への配慮は避けて通れません。適切な対策を講じることで、パートナーへの財産承継を確実にできます。

遺留分の計算方法

税理士法人チェスターによると、遺留分の割合は相続人の構成によって異なります。直系尊属(親)のみが相続人の場合は遺産の3分の1、それ以外の場合は遺産の2分の1が総体的遺留分となります。

例えば、1億円の遺産があり、親が健在の場合を考えます。親の遺留分は3333万円(1億円×1/3)です。全額をパートナーに遺贈する遺言書を作成しても、親は3333万円を請求できます。兄弟姉妹には遺留分がないため、親がいない場合で兄弟姉妹のみが法定相続人なら、全額をパートナーに遺贈できます。

配偶者と子がいる場合(離婚していない、または死別)、遺留分はさらに複雑になります。配偶者の遺留分は4分の1、子全体の遺留分も4分の1です。子が複数いる場合は、その人数で均等に分けます。

遺留分侵害額請求は、相続開始と遺留分侵害を知ってから1年以内、または相続開始から10年以内に行使する必要があります。この期間を過ぎれば、請求権は消滅します。

生命保険の活用

練馬相続相談センターによると、生命保険は遺留分対策に有効です。生命保険金は、原則として相続財産に含まれず、遺留分の対象外となります。(ただし、保険金が著しく過大な場合は『特別受益に準じて算入され得る』判例傾向にはありますので、注意は必要です。)

パートナーを受取人とする生命保険に加入することで、確実に財産を残せます。ただし、すべての保険会社が同性パートナーを受取人として認めているわけではありません。事前に保険会社に確認し、対応可能な会社を選ぶ必要があります。

保険金額が過大な場合、特別受益として遺留分算定の基礎財産に含まれる可能性があります。遺産総額と比較して、適切な保険金額を設定することが重要です。専門家のアドバイスを受けながら、バランスの良い対策を立てましょう。

終身保険だけでなく、定期保険や養老保険なども活用できます。保険料の支払い能力や、必要な保障額を考慮して、最適な保険商品を選びましょう。

養子縁組という選択肢

養子縁組は、パートナーを法定相続人にする特殊な方法です。年齢が上の人が養親、下の人が養子となることで、法的な親子関係を結びます。これにより、パートナーは第1順位の法定相続人となります。

養子縁組のメリットは大きいです。法定相続人として、遺言書がなくても相続権が発生します。相続税の基礎控除や、2割加算の適用もありません。配偶者ではないため配偶者控除は使えませんが、法定相続人としての地位は確保されます。

ただし、デメリットもあります。戸籍に養子縁組の記録が残り、カミングアウトしていない場合は説明が困難になります。また、パートナーシップ制度を利用している場合、養子縁組をすると制度が使えなくなる自治体もあります。

養子縁組を解消(離縁)する場合は、双方の合意が必要です。関係が悪化した場合のリスクも考慮する必要があります。慎重に検討し、必要に応じて専門家に相談しましょう。

遺言書作成の費用

遺言書作成には、種類や内容によって様々な費用がかかります。ゲイカップルの場合、確実性を重視して公正証書遺言を選ぶことが多いため、その費用を中心に解説します。費用対効果を考えて、最適な方法を選びましょう。

公正証書遺言の費用詳細

日本公証人連合会の手数料規定によると、公正証書遺言の基本手数料は財産額によって決まります。100万円以下は5000円、200万円以下は7000円、500万円以下は11000円、1000万円以下は17000円です。

3000万円以下は23000円、5000万円以下は29000円、1億円以下は43000円となります。これは受遺者(パートナー)ごとに計算され、財産総額が1億円以下の場合は11000円の遺言加算があります。

例えば、5000万円の財産をすべてパートナーに遺贈する場合、29000円(基本手数料)+11000円(遺言加算)=40000円となります。これに証人費用(1人1万円程度×2名)、正本・謄本代(1ページ250円)が加わり、総額は6~7万円程度になります。

公証人が出張する場合は、基本手数料が1.5倍になり、日当(4時間まで1万円、4時間超2万円)と交通費が追加されます。病院や施設での作成が必要な場合は、この点も考慮しましょう。

専門家への依頼費用

弁護士や司法書士に遺言書作成を依頼する場合、追加費用が発生します。Authense法律事務所によると、相談料は1時間1万円程度、遺言書作成支援は10~30万円が相場です。

複雑な財産構成や、遺留分対策が必要な場合は、費用が高くなります。しかし、専門家のサポートにより、法的に確実な遺言書を作成できます。特にゲイカップルの場合、特殊な事情を理解している専門家を選ぶことが重要です。

行政書士の場合は、比較的安価で、5~15万円程度が相場です。ただし、行政書士は遺言執行者になれない、相続発生後の紛争には対応できないなどの制限があります。状況に応じて、適切な専門家を選びましょう。

税理士に相談する場合は、相続税のシミュレーションも含めて20~50万円程度かかります。遺産額が大きく、相続税対策が必要な場合は、税理士のアドバイスが有効です。

自筆証書遺言保管制度の費用

法務省の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、保管申請手数料は3900円です。これは1通あたりの料金で、遺言書の保管期間は無期限です。

閲覧請求は、モニターでの閲覧が1400円、原本の閲覧が1700円です。遺言書情報証明書の交付請求は1400円、遺言書保管事実証明書の交付請求は800円となります。これらの手数料は、収入印紙で納付します。

保管制度を利用すれば、相続開始後の検認手続きが不要になります。検認手続きには、収入印紙800円と連絡用切手代が必要で、さらに1~2か月の時間がかかります。この点を考慮すると、保管制度の利用はコストパフォーマンスが高いと言えます。

ただし、法務局では遺言内容の相談は受け付けていません。形式面のチェックのみで、内容の法的有効性は保証されません。確実性を求めるなら、専門家のアドバイスを受けた上で、保管制度を利用することをお勧めします。

費用項目 公正証書遺言 自筆証書(保管制度) 専門家依頼(追加)
基本費用 4~10万円 3900円 5~50万円
証人費用 2万円程度 不要 含まれる場合多い
その他実費 数千円 閲覧時等 別途請求

遺言書作成後の管理と更新

遺言書は作成して終わりではありません。適切な管理と定期的な見直しが必要です。ゲイカップルの場合、法改正の動向にも注意を払い、必要に応じて更新することが重要です。

公正証書遺言の原本は公証役場で保管されますが、正本と謄本は自分で管理します。パートナーには保管場所を伝え、いざという時にすぐ見つけられるようにしましょう。貸金庫や自宅の金庫など、安全な場所に保管します。

自筆証書遺言を法務局に預けた場合は、保管証を大切に保管します。パートナーには、法務局のどこに預けたか、保管番号は何番かを伝えておきます。遺言書の存在を知らなければ、相続手続きができません。

財産状況が大きく変わった場合は、遺言書の更新が必要です。不動産を購入した、大きな預金を解約した、新たな投資を始めたなど、財産構成が変わったら見直しましょう。特定の財産を指定している場合、その財産がなくなると、該当部分が無効になる可能性があります。

法定相続人の状況が変わった場合も、更新を検討します。親が亡くなって兄弟姉妹が相続人になった場合、遺留分がなくなるため、より自由な遺言が可能になります。逆に、子どもが生まれた場合は、遺留分への配慮が必要になります。

パートナーとの関係性の変化にも対応が必要です。残念ながら別れることになった場合は、速やかに遺言書を撤回しましょう。新しいパートナーができた場合は、新たな遺言書を作成します。公正証書遺言の撤回も、公証役場で手続きできます。

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まとめ

ゲイカップルにとって遺言書の作成は、パートナーの将来を守る最も確実な方法です。日本では同性婚が認められていないため、法的には「他人」として扱われるパートナーに財産を残すには、遺言書が不可欠です。

公正証書遺言なら、公証人の関与により確実性が高く、原本も公証役場で保管されるため安心です。費用は財産額により数万円から10万円程度かかりますが、パートナーの将来を考えれば必要な投資と言えるでしょう。

遺留分への配慮や、生命保険の活用、養子縁組という選択肢も検討しながら、最適な相続対策を立てましょう。法改正の動きもありますが、現時点では遺言書がゲイカップルの財産承継を守る唯一の確実な手段です。専門家のサポートを受けながら、早めの対策をお勧めします。

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