2025年8月18日、茨城放送のラッキーFM「ダイバーシティニュース」に、弊社代表取締役CEO須藤啓光が初出演させていただきました。番組では、LGBTQの住宅問題を中心に、社会課題の解決に向けた取り組みについてお話しさせていただきましたので、その内容をご報告いたします。

番組概要

番組名: ラッキーFM ダイバーシティニュース
放送日時: 2025年8月18日(月) 21:00〜
キャスター: 丸山友里さん
コメンテーター: 須藤啓光(株式会社IRIS 代表取締役CEO)

ダイバーシティニュースは、社会のダイバーシティ&インクルージョンをテーマに、毎週異なるコメンテーターから多様な視点を学ぶニュース番組です。

IRISの事業紹介 - 12年の歩みと現在

番組オープニングでは、まずIRISの事業概要について丸山キャスターから質問をいただきました。

丸山キャスター: 「初めてのご登場ということで、LGBTQの不動産を取り扱うということで、一体どんなことをされているのか教えていただけますか。」

須藤: 「私どもは創業12年目を迎えるLGBTQフレンドリーな不動産会社でして、主に同性カップルであったり、外国籍、高齢者、障害者、片親世帯など、様々な『お家を借りにくい、買いにくい』という方々の支援を行っている不動産仲介会社でございます。」

丸山キャスターは創業からの12年という歳月に注目され、社会の変化について興味深そうに質問を続けました。

丸山キャスター: 「12年というと、社会はその間にもどんどん変わってきていますが、その歩みというのは、本当にいろんなこともあったでしょうね。」

須藤: 「そうですね。創業当時はまだ世の中にLGBTという言葉がこんなに定着しておりませんでして、困っている人たちはたくさんいるけれども、まずこれをサービスとして提供して、そして利用してくださるというニーズを顕在化させるというところまでが本当に長く時間がかかったなというのが記憶に残っています。」

この会話を通じて、LGBTQという概念が社会に浸透していく過程での困難さと、先駆者としての苦労が伝わってきました。

ニュースピックアップ - 社会課題への視点

番組前半では、須藤が注目する5つのニュースを取り上げました。高校野球部の暴力問題では部活動における上下関係の文化について、また原爆投下から80年のニュースでは戦争の記憶継承の重要性について簡潔にコメントし、社会課題への幅広い関心を示しました。

日本の空き家問題

空き家問題については、須藤の住む豊島区の実情を交えながら具体的な議論が展開されました。

丸山キャスター: 「過去最多ということで、今1割以上にも上っているんですね。」

須藤: 「私が居住しているのが豊島区というところなんですけれども、豊島区は空き家が多いと言われているエリアでして。住宅政策の軸は新築の物件から既存住宅の活用というものに移りつつあります。重要になるのが、この住宅を必要としている人たちにしっかりと届けることができるかどうかです。」

空き家問題と住宅確保要配慮者の問題を結びつけて語る須藤の視点に、丸山キャスターも共感を示しました。

丸山キャスター: 「家を必要としている方たち、その要配慮者の方たちもいますし、この空き家というのがうまく活用されて、うまくマッチングできればいいなと思うんです。」

IVS 2025への参加体験

国内最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS 2025」への参加体験では、社会起業家としての立場からの興味深い気づきが語られました。

丸山キャスター: 「こちら、須藤さんも実際ご参加されたということなんですね。」

須藤: 「初参加でして、最初お声がけをいただいた際に、私が出ていいものかと驚いたんですけれども。私どもがチャレンジしている場所が、社会課題に取り組みを行っているソーシャルベンチャーと呼ばれる領域なんですけれども、実際そんなことはなくて、席そして立ち見が出るぐらい観客の方が来てくださったんです。」

須藤の謙遜した発言から始まった話題でしたが、実際には大きな注目を集めていたことに丸山キャスターも驚きを示しました。

丸山キャスター: 「実際にお話をされてみて、感触などいかがでしたか。」

須藤: 「LGBTQ当事者の参加者の方もいらっしゃって、実は私、当事者なんですということでお声がけをくださった方が数名いらっしゃいました。今回登壇させていただいたところで、非常にパワーもらえましたという嬉しいお言葉もいただきました。」

この体験談では、当事者同士のつながりの大切さと、公の場で語ることの意義が感じられる場面でした。

同性婚訴訟の違憲判決

番組のハイライトとなったのは、大阪高等裁判所の同性婚違憲判決についての議論でした。

丸山キャスター: 「こちらも大きなニュースとなりましたが、このニュース、どのように受け止めましたか。」

須藤: 「一言でお伝えすると、違憲判決が出て良かったなというちょっとほっとした気持ちです。当初、大阪高裁だけが合憲という判決をされていたという状況に対して不安を感じていたんですけれども、今回の結果、司法判断は一貫して結婚の自由の重要性を強調しているという印象がありました。」

丸山キャスターは判決の変更の背景について関心を示し、社会情勢の変化との関連性について質問しました。

丸山キャスター: 「やはり皆さんの中ではこう安心、安堵といったのがやはり率直な感想でしょうか。」

須藤: 「我々は結婚がゴールではないんですよね。その先にある、例えば暮らしの選択肢を広げていく、そして安心、安全の領域を広げていけたら嬉しいなというところなので、結婚がゴールではないんだけれども、やはり1つの大きな指標として、この社会的な制度が活用できると、我々としては生活に非常に大きな貢献につながってくるかなというところでは、今回の判決結果は非常に嬉しかったです。」

この回答を受けて、丸山キャスターは国際的な動向にも言及し、より大きな文脈での議論へと発展させました。

スペシャルトーク「IRISがたどってきた道」

番組後半では、より詳しい対話が展開されました。丸山キャスターの質問は次第に個人的な体験へと深まっていきました。

創業のきっかけ

丸山キャスター: 「まずは、須藤さんがこのIRISを創業するきっかけとなるところですよね。ご自身の課題感なども含めてお話いただけますか。」

須藤: 「私自身がゲイ当事者だと気づいたのは、高校卒業後の18歳ぐらいの頃なんですね。当時は世の中にLGBTという言葉も広がっておりませんでしたし、テレビを付けますとオネエタレントの方々が活躍されている時代でして、『オカマ』という言葉が使われていた時代で、少し馬鹿にするような意味合いで使われることが多かったので、自分のことはなかなか他人に共有することができないということで、ずっとクローズで生きていくんだろうなと当時思ったんですね。」

須藤の率直な告白に、丸山キャスターは温かい理解を示しながら、その経験が現在の活動にどう影響したかを掘り下げました。

丸山キャスター: 「それはやはり、10代の頃の思い出だったり、ご経験というのが、やはり大きかったんですね。」

須藤: 「20代前半までは、ストレートとして皆さんに見せていたので、職場でも恋人がいないのか、結婚はしないのかって言われるたんびに、他人に嘘をつくと。これが自分にも嘘をつき続けることになりますから、それが苦しくなっていきまして、ちょっとメンタルを崩してしまうということもありました。」

このやり取りでは、セクシャリティを隠して生活することの精神的な負担が具体的に語られ、スタジオにも真剣な空気が流れました。

住宅探しの困難な体験

話題は具体的な住宅探しの体験へと移りました。

須藤: 「同性パートナーとお家探しをした際に、当時は私、金融業界で勤めていたので不動産業界のことは全然知らずでして、街中にある不動産会社を回っていくんですが、なかなか同性カップルでは物件が見つからないんですね。不動産会社5社回って、最後に『礼金1か月上乗せするんであれば住んでもいいよ』って言ってくださる不動産会社さんがありまして、納得はできないけれども、当時、我々が住めるお家はないんだなという状況を飲んだと。」

この体験談に、丸山キャスターは驚きとともに問題の深刻さを理解した様子でした。

丸山キャスター: 「そのルームシェアとして入居せざるを得ない、そこには何か課題は、そうしてしまうことの課題は何かありますか。」

須藤: 「2人入居可能物件とルームシェア可能物件の差を比較しますと、2人入居可能物件の方が約7倍以上あるんですね。1ヶ月ぐらい前に調べた時は、もう10倍ぐらい差がありました。」

この具体的な数字に、丸山キャスターも驚きを隠せませんでした。

丸山キャスター: 「7倍から10倍というと、相当な差になりますよね。」

現在の事業内容と社会の変化

続いて、現在のIRISの事業内容について詳しい説明が求められました。

丸山キャスター: 「具体的にIRISさんではどういったサービスを提供されているんですか。」

須藤: 「主に3つの事業でして、1つ目がメイン事業として不動産の仲介業ですね。9割方がLGBTQ当事者の方々が利用してくださっているんですけれども、残り1割は居住支援ということで、高齢者、外国籍とか、水商売の方とか、いろんな方々が利用してくださっております。2つ目としては、オウンドメディアの運営ということで、年間120万PVぐらいあります。そして3つ目は研修業、講演業です。」

この多面的な事業展開に、丸山キャスターは感心した様子で反応しました。

丸山キャスター: 「驚きました。不動産の住まい探しを一緒に伴走してくださるのかなと思ったら、本当にその社会全体に研修であったりとかそのwebでの周知などにも力を入れてらっしゃるんですね。」

須藤: 「我々は、本当に困りごとから派生して今のビジネスにつながっておりますから、しっかりと利益を出すということももちろんそうなんですけれども、まずは課題を解決するということがやはり重要ですから、IRISという1社だけではやはり難しいと。だからこそ、横の連携をどう活用できるかというのは日々試行錯誤しているところです。」

この回答から、社会課題解決への真摯な取り組み姿勢が伝わり、丸山キャスターもその理念に共感を示しました。

状況の改善と地域格差

近年の状況の変化について、興味深いデータが紹介されました。

須藤: 「2025年、今においては、5年前で比較しますと、大体、IRISでご紹介する時も10件に1部屋ぐらいご紹介できれば良かったものが、今もう3から4件中1件ぐらい紹介できるんですね。ただ、これは首都圏だからできることではあるんですよね。地域格差はまだありまして、東京以外では、なかなかまだまだ理解が進んでいない、そして仕組みが広がっていないということもあるので、この地域格差が残っているのがまだ課題かなと思っております。」

丸山キャスター: 「ここ5年でこう一気に広がってきたような。すごいですね。」

この改善の実感と同時に残る課題についての冷静な分析に、丸山キャスターは感嘆の声をあげました。

医療現場での実体験

番組の中でも特に印象的だったのは、須藤自身の医療現場での体験談でした。

須藤: 「私自身もあったんですけれども、私は急性扁桃炎で救急車で搬送された際に、緊急連絡先として同性パートナーの画面を見せましたところ、『同性の方ですか』って聞かれて、男性同士だということで頷いたところ、『同性は認められないんです』って言われたことがありました。自分のパートナーが家族として認められない、緊急連絡先として認められないということで、非常に不安に感じると。」

この生々しい体験談に、スタジオの空気が一変したのが感じられました。

丸山キャスター: 「まさにその医療ですとか福祉、住宅、相続、本当に人の生活の根幹となってくる部分に本当に関わってくるんですね。」

須藤: 「ですから、我々が目指しているのは結婚するということだけではなくて、皆さんと同じように一緒に人生を過ごしたいなという方々と暮らしていくこと、みんなと同じような暮らしをしたいというだけなんですね。」

この率直な言葉に、丸山キャスターも深く頷いていました。

今後の展望

番組の終盤では、IRISの将来的な目標について語られました。

丸山キャスター: 「最後に、今後についても是非伺いたいんですが。IRISが目指していく社会、どんなものでしょうか。」

須藤: 「まず我々、LGBTフレンドリーというカテゴリーをなくそうと考えております。このカテゴリーがなくても、日本全国どこでも同性カップルを含めた当事者がお家探しに困らないという日本社会を実現することが、我々の第1ミッションとして置いております。」

丸山キャスター: 「もうそれが当たり前として社会に根付くようにといった思いですね。」

須藤: 「これはLGBTQに限った話ではなくて、どのセグメントの方々でもやはり同じようにお家を借りる、そして買いたいという場面があると思いますから、そうした時に選択肢を広く持てるような仕組みを広げていきたいなと感じております。」

この理想的な社会像について、両者の間で共通の理解が深まっていく様子が伝わってきました。

リスナーの皆様からの反響

番組には多くのメッセージが寄せられ、その一部が紹介されました。

たろのすけさんより: 「結婚ってある意味特権優遇だよな。それを異性間にはサービスするけど、同性間には提供しないっていうのは差別であるよな」

須藤: 「こうした温かいお言葉をかけてくださると、すごく安心するんですよね。特別扱いではなく、本当に当然の普通の生活を送りたいだけなんですけれども、それがなかなかまだ実現できていないというところなので、本当におっしゃる通りだなと思います。」

リスナーからの理解ある言葉に、須藤の安堵の気持ちが伝わってきました。

番組を終えて

丸山キャスター: 「改めてご出演されてみていかがでしたか。」

須藤: 「なかなか当事者の住宅課題について知らないよという方が多いのかなと思いますので、今回こうして皆さんに聞いていただけて嬉しいです。どうもありがとうございました。」

丸山キャスター: 「須藤さんがお話されていた通り、色々な社会課題に非常に共通する部分も多いなと感じていて、例えば、その住まいをめぐるその地域差があったり、また取り組みのその企業間での大小といった問題も。そういったところは共通するが故に、いろいろな解決策があれば、一気に解決もできるのかなという風に希望を持ちました。」

番組を通じて、両者の間に深い理解と共感が生まれていることが感じられる締めくくりでした。

最後のメッセージ

丸山キャスター: 「こちらの当事者の方、聞いてらっしゃる方も多いかと思います。ぜひ最後、メッセージいただけますか。」

須藤: 「社会は大きく前進していると思います。その中で感じる嫌なこととか疲れてしまうことがあるのも事実ではあるんですけれども、一方で我々にはまだ希望もございます。一緒にこの日本社会の中で生きていくことを楽しみながら歩んでいけたら嬉しいなと思うので、引き続き応援よろしくお願いいたします。」

この希望に満ちたメッセージで番組は締めくくられました。

おわりに

今回の番組出演を通じて、LGBTQ当事者の住宅課題について多くの方に知っていただく機会となりました。丸山キャスターとの自然な対話の中で、個人的な体験から社会制度の問題まで、幅広い視点で議論することができました。

60分という限られた時間でしたが、リスナーの皆様からの温かいメッセージからも、確実に理解の輪が広がっていることを実感できました。社会は確実に前進していますが、まだ課題も残っています。一人ひとりの小さな理解と行動の積み重ねが、大きな社会変化につながっていくものと信じています。